昔のままの姿を残していた"海うそ"

 もらったり、買わされたりした本はだいたいつまらない。そんな中で楽しみにしているのが同期生の「Mんど本」です。先週の道新ヨンパチ同期会でもらった「海うそ」(岩波書店)も、ヘェーの世界の面白さでした。

画像画像











南九州の遅島のモデルとみられる「甑(こしき)列島」


 筆者は鹿児島出身の梨木香歩さん、どこかで聞いたことがある。ネットで調べると、1995年の小樽・第1回児童文学ファンタジー大賞のおばさんでした。小樽のデスクをやっていて、大きく取り上げました。

 「海うそ」は南九州の遅島が舞台。架空の島で地理や歴史から甑列島の島がモデルのようです。明治の廃仏毀釈で島の寺や霊場がことごとく破壊され、昭和10年ごろに若い地理学者が廃墟を調査します。

 唯一の二階屋(西洋館)の老主人ら島の人々が調査に協力します。老主人の父親が修験僧をしていて、壊された寺の記録を残していた。主人公の秋野らはその文書をもとに1週間、山に入って廃墟跡を調べました。

 調査から戻った夕刻、水平線向こうに白い長方形の壁のようなものが見えた。それが蜃気楼「海うそ」でした。

 最終章は「五十年の後」、秋野は80を超え、島の人々はみな亡くなっていた。島の調査から間もなく、戦争が始まり研究は中断、その資料も空襲で焼けてしまった。研究からも離れた老境の秋野に、観光会社に勤める次男佑二から電話が入る。「父さん、九州の遅島を知ってる?」。佑二は観光開発の仕事で島に入っていた。秋野は再訪し、親子で島を巡る。

 霊場の山はコンクリート会社の砕石で崩されたり、ゴルフ場の予定地になっていた。霊場跡はあとかたもなく消え去っていた。二階屋跡の展望台に着いた2人の前に、白い壁が城壁のように姿を現した。「海うそ」だけが昔のままの姿を残していた。

 廃仏毀釈と観光開発で2度にわたって滅びゆく島が輝き続けていることに、秋野は気付かされた。

画像画像









(選考委員長の河合隼雄さんが毎年出席して盛り上がった受賞式後のセミナー)

 20年前のファンタジー大賞「裏庭」は、荒れ放題の洋館にある裏庭に迷い込んだ女の子が冒険の旅を繰り広げる物語でした。児童文学からスタートした作家が20年を経て、小説家として活躍しているのだから素晴らしい。小樽発の文学の広がりだと思います。

 しかし、Mんどさんの読書力は見上げたものです。去年もらった中原清一郎著「カノン」は2014年めいてんの3冊のトップでした。まいど、いい本ありがとう。

 もらいっ放しも何なので、同期会には第2位の「塀の上を走れ」(田原総一朗)と「断層地帯」(小林勝)を持って行きました。

 最近は視力・気力が衰えたのか、本の数が減ってきた。でも、いい本はまだまだあるので、もうひと踏ん張り。名著と出会いたいですね。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 3

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
ナイス ナイス

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック